失敗大賞応募作品

時間の確認不足で数千万

オルズラボ主催の「第一回失敗大賞」の応募作品「時間の確認不足で数千万」

2017.01.31

熊本で商社マンをしていたころ、大きい物件の引き合いがあった。
総額二千万円を越える物件なので、競合他社の相見積もりになることは明白であった。何度かの打ち合わせで、顧客は好意を示してくれ、見積もりを提出するまでこぎつけた。

いよいよ最終段階で、顧客に対して、製造メーカー(本社は福岡博多)を立ち会わせての、説明会(プレゼン)を行うことになった。

顧客は、担当者、現場の責任者、課長はもちろんのこと、関連部署の課長、会計の窓口である資材課の課長も招いての大説明会であった。

こちら側は、私と上司、それに製造メーカーの担当者と上司の四人が出席する予定であった。
「朝一番」、午前九時から説明会を開くことが決まり、一週間ほど前にメーカーの担当者に連絡した。

そして、当日を迎えた。

私と上司で、顧客の会社の会議室に行って準備をしていると、十名ぐらいの人が集まった。

しかし、メーカーが来ない。八時四十五分になり、十五分前なので、心配になり、確認の電話をかけてみると、まだ博多にいて会社を出るところであった。メーカーの担当者が、どこでどう聞き間違えたのかわからないが、「午後一」、午後一時から始まると思っていたらしく、時間的に間に合わないことがわかった。博多から熊本まで、高速を使っても二時間あまりはかかる。

時間を割いてもらったお客さんを待たせるわけに行かないので、商社側だけで行うことになった。

私は担当者として、パンフレットと資料を配布し、黒板に作図したものを示しながら、はじめることにした。
説明自体はうまくしゃべれ、上司のフォローも入って、完璧とは行かなかったがまずまずのできであった。しかし、それはパンフレットに書かれてあるレベルだったのである。それが質疑応答の時間をとると、一気に暴露した。

実際に現場に携わる顧客らは、詳しい知識、鋭い質問を浴びせた。私らは返答に困り、「調べておきます」、「後日お答えします」、「~だと思います」など、質問にまともに答えられずの防戦一方となった。
すると、「何故、メーカーは来ていない」、「メーカーを連れて来い」という核心を突く鋭い質問が飛んだ。顧客の不満爆発である。最後には「お前らでは埒があかん」という暴言になり、私らは頭を下げるしかなかった。数千万円が飛んだ瞬間であった。

会社に帰り、私の上司は、メーカーに抗議し、激怒したが、時間ついては、メーカーの担当者と私が、言った言わないとの押し問答となってしまった。結果的に、物件は競合他社に持って行かれ、そのメーカーは、私の会社とは取引停止となった。私の方は、始末書、顚末書を提出した。

私が前日に電話で、メーカーの担当者に時間の確認さえしておけば、もっといい展開になったはずである。
これが私の大失敗である。

第一回オルズラボやってしまった失敗大賞

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