急転落のアプリ会社
日本風にローカライズしたスマホゲームでマイナス1億円という大赤字を出してしまうスマホゲームアプリ会社の痛い話。
2016.10.20
スマートフォンの普及が進み、急成長を遂げたアプリ事業。特にスマホゲーム事業では、目のくらむような成功を収めるケースも少なくない。
幾つものIT企業を渡り歩いてきたN氏は、日本の大手ゲーム会社で勤務をしていたS氏とともにモバイルゲームのパブリッシャー事業を軸とする会社を設立。海外のモバイルゲームを日本風にローカライズし、展開していく事業だ。
「海外の良質なカジュアルゲームを日本にもってくる」という戦略が的中し、1年目~4年目までは売り上げは右肩上がり。アプリのヒット作にも恵まれ、あるゲームでは一本で2億円の売り上げをたたき出した。
ところが4~5期目にかけて大失敗を経験。マイナス1億円という大赤字を出してしまう。
2億円からマイナス1億円?
何もしない方が良かったって思えるくらいの赤字だ…。どうしてそうなったの!?
きっかけは投資を受けたことだ。大きな投資を受けたことで、メンバーをどんどん増やし事業を拡大したが、売上拡大を優先するあまり、無理に手を広げすぎてしまった。
当時は自分たちが「本当にやるべきこと」を見失っていたとN氏は振り返る。
ゲーム以外の「サービス系アプリ」を自社で立ち上げようとしたが、それがことごとく失敗した。「婚活アプリ」「写真共有アプリ」「顔文字アプリ」など、当時流行っていたジャンルには、ほぼ手を出した。
狙いはゲームとサービスを立ち上げて、相互にユーザーを回遊させることだった。いわばユーザーの「エコシステム」をつくろうと画策をしたわけだ。
一時すさまじい数のアプリが出来てた時期があったけど、あの位のタイミングかな…。スマホに入れては消してってよくやってた。
しかし、現実はそう上手くはいかなかった。盲点だったのは「ゲーム」と「サービス」では、必要となるスキルセットが全く違うものだった。
ゲームをつくりたくて集まったメンバーは、ゲームがつくりたくて入社をしている。サービスには興味がないため、マネタイズが見えてきて、さあスケールしようかというときに、人をうまく寄せることが出来ずに運営が後手に回った。自社の戦力が分散し、社員の仕事は次第にどれも片手間という具合になっていった。
そうなると、競合よりよいサービスをつくることは難しくなっていく。例えば、手を出していた婚活アプリでは、「pairs」などの一点突破をしているスタートアップには、戦力差で絶対に勝てなくなる。
またゲームとサービスだと、ビジネスとしての攻め方も異なってくる。ゲームは最初から大きな売上が立ちやすいが、「サービス」は地道に育てていかなければマネタイズに結びつかない。収益の上げ方の認識が甘かったことも、赤字転落への要因となった。
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人気スマホゲームリリースから一転。大赤字に陥ったアプリ会社の急転落(2) ~失敗2 ゲームジャンルを広げて失敗~